転職を考えているママたちにとって、膨大な数の求人票の中からぴったりの仕事を見つけるのは至難の技。
求人票には、待遇や勤務条件、必要な能力や資格など、詳細な情報が詰まっていますが、専門的なワードが多くて理解が難しいこともあるのではないでしょうか。
そこで今回は、労働関係の法令のスペシャリストである社会保険労務士が、求人票のワードを徹底的にお伝えします。
一見複雑に見える情報も、適切な知識があれば理解でき、賢い転職活動が始められます。専門用語につまずくことなく、自分自身と家族の未来に繋がる選択を積極的に進められるようになるはずです。
語弊を恐れずに言うならば、求人票は仕事の”説明書”です。だからこそ、それぞれの欄が何を指しているのかを知ることで、本当に必要な情報を見極められます。
この記事では、易しい言葉を用いて解説していきます。最後まで読むことで、すっきりとした理解を得られることをお約束いたします!
雇用形態
どのような雇用形態で働くかは、あなたの生活スタイルや働き方に大きく影響します。
それぞれの雇用形態には特性やメリット、デメリットがあります。あなたにとって適切な雇用形態を選ぶためには、自分の働きたいスタイルや求めている待遇を理解することがとても大切です。
正社員
正社員は、一般的には終身雇用を前提とした雇用形態です。
長期間にわたって安定した雇用が保証され、安定した収入を得ることが可能です。また、雇用保険や健康保険、厚生年金などの社会保険に加入することが義務付けられています。
福利厚生も充実しており、有給休暇や退職金制度、各種手当などを受けることが可能です。
しかし、その反面、定時外の労働や長時間労働が求められることもあります。組織の一員として、組織の利益を優先することが求められることが多く、自由な働き方をすることは難しいこともあります。
多様な正社員
多様な正社員とは従来の正社員と比べ、職務内容、勤務地、労働時間などを限定して選択できる正社員をいいます。
厚生労働省は、多様な正社員として以下の3つを挙げています。
- 勤務地限定正社員
- 転勤するエリアが限定されていたり、転居を伴う転勤がなかったり、あるいは転勤が一切ない正社員
- 職務限定正社員
- 担当する職務内容や仕事の範囲が他の業務と明確に区別され、限定されている正社員
- 勤務時間限定正社員
- 所定労働時間がフルタイムではない、あるいは残業が免除されている正社員
勤務地や勤務時間を限定することで、介護や育児などの私生活の事情にも対応がしやすくなります。今の時代に合った新しい働き方と言えます。
賃金以外の待遇はほとんど正社員と同じなのが主な特徴です。
契約社員
契約社員は、一定期間の労働契約を結ぶ雇用形態です。
正社員が無期雇用なのに対し、契約社員は有期雇用です。
正社員と比較して雇用の期間が限定されるため、一見不安定な雇用形態のように思えますが、実際には多くのメリットがあります。
たとえば、契約内容によりますが、専門性を活かすことができる、または特定のプロジェクトにだけ参加することも可能です。そのため、キャリアチェンジやスキルアップを目指す方には適した雇用形態と言えるでしょう。
ただし、契約期間終了後の雇用継続や社会保険の加入、福利厚生については、雇用主との契約内容次第です。
パート・アルバイト
パート・アルバイトは、正社員や契約社員と比べて働く時間や日数が短い、または不規則な雇用形態です。
生活スタイルに合わせて勤務時間や日数を選べるので、主婦や学生などのライフスタイルに合わせた働き方を求める人にとってはメリットが大きいです。
しかし、正社員と比べて給与や待遇が低く、社会保険に加入できない場合もあります。
業務委託
業務委託は、自身が専門家として一定の業務を担当し、その結果を雇用主に提供する形態です。
自己のスキルを最大限に活かすことが可能で、自由な生活リズムや作業環境を選べることから、ワークライフバランスを重視する人にとっては理想的な働き方と言えます。
ただし、成功や失敗が直接収入に影響するため、自己管理能力や責任感が求められます。
最近では、会社が社会保険料の節約のために、実体は社員のように会社の指示の下働かせているのに、業務委託として契約を結ぶケースが多くみられるので注意が必要です。
勤務時間
勤務時間の形態は、雇用主の業務内容や従業員の働き方に影響を与えます。
また、最近は柔軟性を求める働き手のニーズに応えるため、雇用主はさまざまな勤務時間制度を導入しています。
フレックスタイム制
フレックスタイム制とは、労働者が自由に出勤・退勤時間を設定できる制度のことを指します。
朝が苦手な人、育児や介護などで自由に使える時間が限られている人など、自分のライフスタイルに合わせた働き方が可能です。また、混雑した通勤時間を避けられるのも大きなメリットの一つです。
ただし、全員が同時に働く必要がある場面や、業務の性質上決まった時間に働く必要がある場合は、適用できないこともあります。
コアタイム
フレックスタイム制において、全員が必ず出社しなければならない時間帯をコアタイムと呼びます。
この時間帯にはミーティングや共同作業など、協力して行う業務が多く存在します。
コアタイムを設けることで、フレックスタイム制のメリットを享受しつつも、業務効率を確保することができます。
コアタイムがないフレックス制のことをフルフレックス制と言い、労働者の裁量で働く時間を自由に決めることが出来るので、ママには特に働きやすい制度と言えます。
フレキシブルタイム
フレックスタイム制において、労働者が自分で働く・働かないを判断できる時間帯のことを指します。
一般的にはコアタイムを間に挟むように設定され、出社・退社時間の調整を出来る時間です。
例えば…
- 1日8時間勤務
- コアタイム 10:00~15:00(休憩1時間込)
- フレキシブルタイム 7:00~10:00、15:00~22:00
というフレックスタイム制を採用している会社では、必ず働かなければならないのが10:00~15:00の4時間で、残りの4時間をフレキシブルタイムの中で働けばよい、ということになります。
変形労働時間制
変形労働時間制とは、一定の期間内でその平均労働時間が法定労働時間を超えないように、労働時間の配分を工夫する制度です。
例えば、ピーク時には長時間働き、オフピーク時には短時間労働というように、業務量に応じて労働時間を調節します。これにより、雇用主は業務効率を向上させ、労働者は長期的な視点で自由な働き方ができます。
基本的には1日の労働時間が長ければ年間休日が増え、年間休日が少なければ1日の労働時間が短くなります。
年間休日が少ないとブラックなイメージがありますが、変形労働制を採用していればオフピーク時は労働時間を短く抑えられることもありますので、一概に年間休日105日=ブラックという訳ではありません。
ただし、ピーク時には過度な労働が求められることや、プライベートの予定が立てにくいといったデメリットもあります。
時間外労働
時間外労働というのは単純に言えば残業のこと。
労働基準法で定められている労働時間は、1日8時間、週40時間。(一定の基準を満たすと44時間)
この時間を超えると「法定外残業」となります。法律で定められている時間を超えて働いたということです。この場合は割増賃金が支払われます。
短時間正社員のように、1日8時間に満たない…たとえば6時間の契約の人がいる場合、6時間を超えて8時間未満の残業は「法定内残業」となり、割増賃金の支払いは必要ありません。(単純に、働いた分の時給のみ支払われる)
36協定
36協定とは、労働基準法第36条に基づき、労働者と雇用主が時間外労働や休日労働の上限を定める合意をすることを指します。
36協定がない場合、基本的には時間外労働は原則禁止となります。
36協定を結ぶことで、適切な範囲内での時間外労働が可能となりますが、その上限は厳格に守らなければなりません。
時間外労働の条件はこちら
- 1か月45時間以内
- 1年360時間以内
※業種や変形労働時間制の場合は異なります
ちなみに、36協定は作業場の見やすい場所への掲示や備え付け、書面の交付などの方法により、労働者に周知する必要があります。
この辺りの法令をきちんと守っていない会社は、残念ながらブラックの可能性が高いと思われます。
36協定における特別条項
36協定には通常の労働時間を超える勤務について定めますが、それに加えて一部の業種や職種、または特定の状況下で働く労働者に対して、特別な時間外労働の上限を定める特別条項が存在します。
これにより、極めて多忙な業務や緊急事態に対応する必要性がある労働者に対し、一定の範囲内での時間外労働を認めています。
ただし、労働者の健康保護の観点から、特別条項を適用する場合でもその上限は一定です。
具体的には、
- 1年の時間外労働が720時間以内
- 1か月における時間外及び休日労働が100時間未満
- 2、3、4、5、6か月の期間いずれにおいても時間外及び休日労働が月平均で80時間以内
- 時間外労働が45時間を超える月数は、1年において6か月以内
とかなり複雑な規制が設けられています。
残業が多いかも?と感じた時は、その事業所の36協定がどうなっているのかを確認するのをおすすめします。
ここまで、求人票でよく出てくるワードについて解説してきました。
使用者(会社)と労働者では、どうしても労働者の立場が弱くなりがちです。用語や法令について知識をつけることで、不当な労働条件を押し付けられることが減ると思います。
気になる会社や求人票を見つけたら、ぜひこの記事と見比べてみてくださいね。